音楽の友 9月号

鷲見加寿子(p)退任記念演奏会

 優秀な生徒たちを世に送るとともに演奏家としてもたゆまざる歩みを重ねてきたピアノの鷲見加寿子が東京音楽大学教授を退任し、7月6日、その記念演奏会が紀尾井ホールで盛大に開催された。 全4部構成、第1部と第2部は同大学の在校生と若手卒業生の出演。 篠永砂也子、前田史也、小林遼、齊藤文、小原慧子、手嶋菜月、大橋縁、根岸玲那、中村純子、岩間有美恵、森浩司、―柳麻衣、池村京子がソロを、濱本愛と山崎裕が連弾を披露した。 第3郵はすでにプロとして世に出ている教え子や鷲見の薫陶を受けた第一線演奏家の出演。 石井理恵のラフマニノフの「前奏曲」、石黒典子のドビュッシー〈水の反映〉〈金色の魚〉、佐藤彦大のスクリャービンの「ソナタ第2番」に続き、バリトンの寺田功治がくマイ・ウェイ〉を朗々と歌いあげる。 続いて高校時代から鷲見に私淑したチェロの趙静。 プログラムにピアニストの記載はなく無伴奏かと思うと、パープルのドレスの趙静か目の覚めるようなピンクのドレス姿の恩師と連れ立って登場。 〈白鳥〉と《ヴォカリーズ》で聴衆のため息を誘った。 締めは、5歳から10歳まで鷲見に師事し当時から大器ぶりをみせていたと師が語る小菅優。 チャーミングなモーツァルトの「ソナタ」K.330を恩師に捧げた。 いよいよ業4部は鷲見が本格的に登場。 幼少期に鷲見の父、故鷲見四郎に師事して鷲見家とゆかりの深いヴァイオリンの佐藤俊介以下、中川直子(vn)、生野正樹(va)、門脇大樹(vc)の若手弦奏者たちと共演して大曲シューマンの「ピアノ五重奏曲」に大輪を咲かせた。
 (萩谷由喜子)